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経営改善計画と制約要因 ~制約があるからできること~

以前のブログで、経営改善計画策定支援(405事業)には、制度上の決まりや制約が多いというお話をしましたが、今回は「制約があるからできること」について考えてみたいと思います。

「制約」を辞書で調べると、「ある条件や枠をもうけて、自由な活動や物事の成立をおさえつけること。また、その条件や枠」とあります。ビジネスの場面では、時間、コスト、基準、法規制等、自分では自由に変えられないものが「制約」にあたると考えられます。

経営改善計画策定支援(405事業)では、債権者(金融機関)が納得する内容であるか(基準)が大きな制約となりますが、そもそもそれ以前に「お金と時間が限られている」という制約が存在します。お金と時間、金融機関が納得する内容という制約だらけの難しい作業になりますが、一方で、制約があるから前に進めることもあると思います。以下、普段私が感じていることをいくつか紹介します。


■すぐにやる(やらざるを得ない)

業績が悪化している事業者は資金繰りも厳しいのが一般的です。事業の損失や返済等でキャッシュアウトしている場合、その状態が続くといずれ資金がなくなり倒産してしまいます。何か月もかけて計画が完成してから改善策(アクションプラン)に着手するという時間的余裕はありません。

経営者の中には、自身が納得しないとなかなか行動に移せないタイプの人もいると思いますが、経営改善計画においては、一刻も早く、半ば強制的に行動を起こさざるを得ません。もちろん全体の計画との整合性や優先順位等を考慮する必要はありますが、多くの場合、アクションプランを実行して検証するという作業を繰り返していけば何らかの成果は出てきます。早く行動を起こし、小さくても成果を出すことで改善の糸口が見つかる可能性が高まりますし、経営者の意識や債権者の評価も変わってくるという効果も期待できます。


■段階的に考える(考えざるを得ない)

経営者は誰しもやりたいことや理想の姿をイメージしていると思いますが、業績悪化先は「お金と時間」という制約があるため、その時点でできる範囲のことしかできないというのが現実です。

例えば、飲食店の業績改善策として、店舗を全面改装して業態変更したいと考えたとしても、改装資金が確保できなければそれ以外の方法を考えなければなりません。このような場合、一般的には、FLの改善、メニューやオペレーションの見直し、DX化等により、まずは足もとの業績を改善し、資金に余裕ができた段階で次のことを検討するという流れになります。

現時点で店舗改装はできなくても、この先ずっとできないわけではないので、「今はできる範囲のことに集中し、次の展開を検討できる状況を早く作る」と考え、段階的に前に進めていくことも必要です。


■制約があるから考えやすい

経営改善に限った話ではありませんが、アクションプランを考えるときにも「制約」は役に立ちます。

何もない自由な状態よりも、制約があった方が物ごとを早く始められる、創造性を発揮しやすい、と感じている人も多いのではないでしょうか。X(旧ツイッター)は全角140文字という制限があるからブログよりも書きやすい、短歌や俳句は文字制限があるゆえにシンプルな言葉で抒情的な表現が生まれ読み手の想像も広がる、などは分かりやすい例だと思います。

制約があることの効果としては、考える範囲がある程度絞られるため論点が明確になり考えが深まる、制約をクリアするにはどうするか知恵を絞るため良いアイデアが生まれやすい、制約の中であれば何を考えてもいい、場合によってはある程度妥協せざるを得ない(踏ん切りがつく)、といったことなどが考えられます。


■アクションプランの事例

経営改善計画とは直接関係ありませんが、制約とアクションプランについての事例を紹介します。

山間部にある20室程度の旅館。おもてなしや料理が評判で、客室単価も比較的高く業績も順調。トップシーズンはほぼ満室だが、室数が少ないためトップシーズンの売上は頭打ち。業種・地域的に新たな人材の確保が難しく、従業員の負担も大きいという問題を抱えていました。

「室数が限られている」、「人手が不足している」という制約のもとで様々な対策を検討した結果、現在ある部屋の一部を高級感のある洋室に改装して価格改定を行い、あわせて客室係の業務フローの見直しを行いました。

これにより、客室単価が約2割上昇し、これまで難しかったトップシーズンの売上増加が可能となったほか、布団の上げ下げや清掃作業等、客室係の作業負担が軽減し業務の効率化が進みました。また、洋室にしたことで、インバウンドや足腰の悪い高齢者という新たな客層を取り込むことができました。


上記の例は、「制約」が旅館の戦略や設備投資といった意思決定を後押しするきっかけとなったケースです。

「制約」というと不自由でマイナスなイメージがありますが、一方で、行動に移す心理的なハードルが下がり発想や想像力をより発揮しやすい、といったプラスの面もあります。たくさんの制約があるなかで、何とか打開策を考えて業績改善を進めていくことが経営改善計画策定支援の難しい部分でもあり、面白い部分でもあると思います。

木下伸一

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