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「経営改善計画策定支援(405事業)」をフレームワークとして考えてみる

 フレームワークとは、物事を考える際に用いる「枠組み」のことを指します。ビジネスにおいても、戦略策定や問題解決など多くの場面で使われており、代表的なものとしてロジックツリー、SWOT分析、ファイブフォース分析、バリューチェーンなどが挙げられます。私どもが関わらせていただいている経営改善計画策定支援(以下405事業)でも多くのフレームワークを使いますし、計画に盛り込む内容や運用方法にも一定の枠組みがあります。今回は、405事業をフレームワークの観点から考えてみます。


①「窮境要因」「課題」「解消の方向性」

 405事業では、「窮境要因の除去可能性(窮境要因・課題・解消の方向性)」を明らかにしたうえで、計数計画や行動計画(アクションプラン)を策定します。もう少し具体的に言うと、現状とあるべき姿のギャップを認識したうえで(課題の認識)、どこに問題があるかを特定しその原因を掘り下げ(窮境要因の特定)、課題に対する解決策を立案します(解消の方向性)。

 これは、「問題の明確化」「問題箇所の特定」「原因の追究」「解決策の立案・実行」という問題解決の枠組みに近いものであり、計画策定の過程で必然的に問題解決のプロセスを実践していることになります。


②SWOT分析

 計画策定の過程においては、いくつかのフレームワークを使い分析を行いますが、ここでは「SWOT分析」を例に説明します。「SWOT分析」は、外部要因を「機会」「脅威」、内部要因を「強み」「弱み」の4つに分類し分析するもので、外部環境や自社の現状把握、その後の戦略策定等に活用されます。

 あまりに有名なフレームワークですが、使う際には留意点もあります。例えば飲食店の場合、「メニュー数が多い」ことは、お客さまの多様なニーズに対応できる(強み)反面、自店の特徴がぼやけたり、オペレーションが煩雑になったりする(弱み)等、強みと弱みは表裏一体の関係にあります。また、「メニュー数の多さ」は競合店等との相対評価という点で、近隣に自店よりメニュー数が多い、あるいは魅力的なメニュー構成の店が存在する場合には、必ずしも「強み」とはいえない可能性もあります。フレームワークはとても便利なものですが、それぞれの特徴やできること、できないことを理解したうえで使うことが重要です。


③PDCAサイクルとOODAループ

 経営改善計画では、計画達成のためのアクションプランを5W1H(これもフレームワークです)で落とし込み策定します。経営改善計画策定後は、アクションプラン(P)を実行し(D)、定期的に実行状況や計画との差異要因を把握し(C)、対策を立案・実行(A)しますが、実際の現場では、アクションプランが実行されないということがよくあります。原因はいくつか考えられますが、現状把握や計画が適切でない、計画策定に時間がかかる、といったスタート時点の問題が挙げられます。

 このような場合には、現状観察を重視した意思決定モデルである「OODAループ」の考え方を取り入れることも有効です。詳細な説明は省略しますが、「OODAループ」は、似たようなフレームワークである「PDCAサイクル」よりも環境変化に迅速かつ柔軟に対応できます。また「PDCA」の起点を変えた「CAPD」も別の効果が期待できます。このように、状況に応じていくつかのフレームワークを組み合わせて使うことで、計画の実効性が高まる可能性があります。


④制度上のPDCAサイクル

 405事業は、借入金の条件変更や新規融資などの金融支援を必要とする事業者が、国の認定を受けた専門家(認定支援機関)の支援を受けて経営改善計画を策定するもので、計画策定後は認定支援機関の支援を受けながら計画を実行していきます(伴走支援といいます)。また、金融機関からの金融支援が前提となるため、計画の実行状況を定期的に金融機関に報告する必要があります(1~3か月に1回が一般的)。

 このように、制度にPDCAサイクルが組み込まれている405事業ですが、実際には、経営改善計画を作っただけというケースが散見されます。伴走支援や金融機関への報告が形骸化していることが大きな原因と考えられますが、2022年春に伴走支援強化の制度見直しが行われ、制度の実効性を高める対策がとられています。


 ここで説明した内容はほんの一例ですが、経営改善計画策定支援(405事業)では、多くのフレームワークを使うだけでなく、制度そのものがフレームワークであるともいえます。フレームワークですべてが解決できるわけではありませんが、フレームワークの特徴を正しく理解し、計画策定・伴走支援に地道に取り組むことで、事業を見る力、問題を解決する力が鍛えられ、経営改善計画の実効性も確実に高まると思います。

木下伸一

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