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~計画は「最初の認識」と「分析の精度」で決まる~

経営改善計画策定支援(405事業)におけるフレームワークの使い方②
~計画は「最初の認識」と「分析の精度」で決まる~

前回、フレームワークは「答え」ではなく「問いをつくる道具」であり、埋めることが目的ではない、という話をしました。

分析はきれい、資料も整っている。それでも何も変わらない。こうした計画の多くは実行段階で止まります。さらに踏み込んで言うと、止まっている場所はもっと手前かもしれません。

計画は、実行で失敗するのではなく、最初からズレている。

今回はその「最初」の話、つまり現実認識と現状分析の精度について考えてみます。

「信頼関係」より先に、同じ現実を見ているか

経営支援の現場では、「まずは信頼関係を築くことが重要」と言われます。もちろん信頼関係は重要です。しかし計画策定の現場では、その前に確認しなければならないことがあります。

①お互いが同じ現実を見ているか

例えば、

・強みを期待や願望で語っている
・問題を外部要因だけで説明している
・数字は把握しているが、意味までは理解できていない

こうした状態のまま計画策定に入ると、議論は少しずつズレていきます。必要なのは表面的な納得感ではなく、経営者と支援者の双方が事実を共有できているかどうかです。

良い面も悪い面も含めて、現実をそのまま見る。正直、こういった場面は重いもので、ある意味勇気も必要です。しかし、ここを避けると、その後の議論はすべて「それっぽい会話」になります。

主観を離れ、現実を構造的に見るための補助線として使う。フレームワークが役に立つのは、このときです。

②その前提として「お互いが同じ言葉で会話しているか」

上記①の前提として、同じ言葉を使っていても、意味が揃っていないことが少なくありません。

例えば、「強み」「技術力」「品質」「信頼関係」といった言葉です。経営者、幹部、従業員、支援者が同じ言葉を使っていても、実際には異なるものをイメージしている、定義がズレていることがあります。その状態で議論を進めると、話し合っているようで、実は別々のものを見ていることになります。

大切なのは結論を急ぐ前に、「その言葉が何を意味しているのか」を確認することです。

SWOTは十分使える。ただし「曖昧」だと意味がない

私は、現状分析であれば、多くの中小企業の場合、SWOT分析である程度対応できると考えています。問題はフレームワークの種類ではありません。どこまで深く見ているかです。

例えば、

・強み:高い技術力
・強み:顧客との信頼関係
・弱み:人手不足
・弱み:営業力不足

よく見かける表現ですし、間違いではありません。しかし、このままでは判断材料としては不十分です。

重要なのは、

・本当に競争優位になっているのか
・今も強みとして機能しているのか
・将来も再現できるのか

という視点です。

実際には、強みだと思っていたものが、「そもそも強みではなかった」「環境が変わって強みではなくなった」「強みではあるが再現できなくなっている」というケースは少なくありません。

分析とは単なる整理ではありません。曖昧な認識を、検証可能な事実に変えていく作業です。

ここが甘いと、その後のすべてが曖昧になります。精度の低い認識から、精度の高い計画は生まれません。

「強み」だと思っていたものは、本当に強みなのか

ここで事例をもとに考えてみます。

ある製造業では、「高い加工技術」を自社の強みとして挙げていました。実際、その技術は長年にわたり取引先から評価され、過去には他社との差別化要因にもなっていました。

しかし詳しく話を聞いていくと、近年は設備の進歩や技術の普及によって、多くの競合企業でも同様の加工が可能になっていました。一方で、顧客が評価していたのは加工技術そのものではなく、「開発段階から相談できること」「試作対応が早いこと」「顧客の課題に応じて提案できること」、こうした対応力でした。

ところが会社側は、「技術力の承継」を最重要課題と考え、それを前提に経営改善計画を検討していました。もちろん技術は重要です。ただ、本当に競争力の源泉となっていたのは、技術そのものではなく、顧客の課題を理解し解決する力だったのかもしれません。

さらに言えば、「強み」という同じ言葉を使っていても、その意味する内容が関係者の間で揃っていないこともあります。この会社が見誤っていたのは、技術力そのものではありません。「技術力」という言葉の意味でした。顧客が評価する技術力と、自社が考える技術力が一致していなかったのです。

つまり、この会社で起きていたのは分析不足ではなく、分析の前提となる現実認識が、すでに少しズレていたのです。

分析は「言葉」ではなく「使えるか」で判断する

もう一つ意識したいのは、分析結果の使い方です。

フレームワークは埋めた瞬間に価値が生まれるものではありません。意思決定に使うことで初めて価値が生まれます。

例えば、

・この強みはどんな施策につながるのか
・この弱みはどこまで許容できるのか
・この機会は本当に取りにいくべきなのか

こうした問いに答えられなければ、どれだけ整理された分析でも実務では役に立ちません。

実際の現場では、「整理はできているが、判断はできていない」という状態をよく見かけます。その状態で計画を作れば、当然ながら動く計画にはなりません。

フレームワークの価値は、埋めることではなく、意思決定に使えることにあります。

数字もまた、現実を確認するための重要な材料である

経営改善計画では、売上や利益、資金繰りといった数値計画が重視されます。最終的には5年間の数値計画を達成できるかどうかが大きな評価基準になるため、数字は欠かせません。

ただし、その数字も現実認識の上に成り立っています。例えば、売上が減少しているという事実は同じでも、「市場環境が悪い」のか、「顧客が離れている」のか、「強みが機能しなくなっている」のかによって打つべき手は大きく変わります。

前提となる認識がズレていれば、どれほど精緻な数値計画を作成しても、その数字は現実から少しずつ離れていきます。

数字はゴールであると同時に、現実認識が正しいかを確認するための材料でもあるのです。

計画は、最初の精度でほぼ決まる

ここまで見てきたように、

・現実認識が揃っているか
・言葉の定義が揃っているか
・分析が意思決定に使える水準か

こうした要素によって、その後の計画の質は大きく変わります。

フレームワークは有効な道具ですが、正しさを保証してくれるわけではありません。むしろ注意したいのは、整理された資料や分析結果によって、「できたつもり」になってしまうことです。

計画は実行段階で失敗するのではなく、その前の認識や分析の段階ですでに方向性が決まっていることが少なくありません。だからこそ支援者に求められるのは、フレームワークを埋めることではなく、「本当に同じ現実を見ているのか」「その分析は意思決定に使えるのか」を問い続けることだと思います。

もっとも、認識が揃い、分析の質が高ければ、それだけで計画が動くわけではありません。実際の現場では、「実行できない施策が並ぶ」「負荷が現実と合っていない」「全体がつながっていない」といった問題が次の段階で現れます。

計画は「正しく作る」よりも、「動く形に設計する」方が難しい。

次回は、計画をどう「動く状態」に持っていくのかについて考えてみます。


木下伸一

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