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ビジネスの現場では、さまざまなフレームワークが日常的に使われています。それらを活用することで、複雑な状況が整理され、分かりやすい資料や計画ができあがります。
しかし、その計画がそのまま実行され、結果につながるかというと、必ずしもそうではありません。
実際の現場では、「分析はできている」「課題も整理されている」「施策もきれいに並んでいる」。それにもかかわらず、何も変わらないという状況が少なくありません。
以前のコラムで、405事業を一つのフレームワークとして整理してみましたが、そこから見えてきたのは、「構造としてはよくできている」という点です。では、なぜ計画は動かないのか。今回は405事業の現場をベースに、フレームワークの使い方における構造的な問題について考えてみます。
405事業(注)は、「窮境要因の特定」「課題の整理」「改善策の検討」という一連のプロセスが組み込まれた仕組みであり、制度そのものが合理的なフレームワークになっていると言えます。実際、計画書として提出される資料はよく整理されており、形式としての完成度は高いものが多い印象です。
しかし、実行段階になると状況は大きく変わります。「計画通りに進まない」「改善策が実行されない」「計画と実績が乖離する」。つまり、完成度は高いのに、機能していない。この事実はフレームワークの優劣ではなく、「使い方そのもの」に問題がある可能性を示しています。
合理的に設計されたはずの405事業が、なぜ現場では機能不全を起こしてしまうのか。その背景には、支援側である私たちが、フレームワークという道具の性質を誤解している可能性があります。本コラムでは、4回シリーズの第1回として、なぜ計画が思った通りに実行されないのか、その背景とフレームワークの本来の役割について考えていきます。
(注)405事業:金融支援を伴う経営改善の取組みが必要な中小企業等を対象として、専門家(認定支援機関)が経営改善計画の策定を支援する制度。計画策定費用及び伴走支援費用について国が3分の2(上限300万円)を負担する
支援現場において、コンサルタントが陥りやすい誤解があります。これは場合によっては経営者にも当てはまる話かもしれませんが、フレームワークを「自動的に課題が解決する魔法のツール」のように捉えてしまうことです。この誤解には、主に2つの背景があると考えられます。
① 「分類できた=解決できた」という錯覚
フレームワークを使うと、複雑な情報がきれいに整理されます。要因が分解され、論点が整理され、全体像が見える。その瞬間、人は強い納得感を得ます。しかし、ここで起きやすいのが、 「分類できた=解決できた」という錯覚です。
冷静に考えれば、これは企業を取り巻く要素を分類しただけであり、現実が変わったわけでも、新しい価値が生まれたわけでもありません。にもかかわらず、「分かった気になる」「できた気になる」という状態に陥りやすい。そしてそのまま先に進むと、「きれいだけど動かない計画」ができあがることになります。
②「成果物の可視化」という構造的な問題
もう一つ見逃せないのが、支援業務そのものの構造です。コンサルタントや支援機関は、計画書という形で成果を示し、金融機関など外部に説明する必要があります。
その結果、「見やすい」「分かりやすい」「整理されている」完成度の高い資料を作ることに意識が向きやすくなります。一方で、経営者の認識を変える対話や現場の動きを変えるコミュニケーション、実行を継続させる仕組みづくり、といった取り組みは、時間も手間もかかるうえに、成果として見えにくいものです。その結果、本来優先すべき「実行」に向けたプロセスよりも、資料作成が重視されるという現象が起きやすくなります。
フレームワークは、その目的や思考プロセスによってさまざまに分類することができますが、ここでは型で分類してみます。

詳細には踏み込みませんが、全体像を俯瞰しておくことで、それぞれのフレームワークがどのような役割を持っているのかが見えやすくなります。また、「何を整理したいのか」に応じて適切に選ぶことで、使いやすさも大きく変わります。例えば目的別であれば、「現状分析・戦略立案」、「マーケティング」、「業務改善・マネジメント」、「思考の整理・問題解決」といった分類も可能です。
いずれにしても重要なのは、目的を明確にすること、目的に合ったフレームワークを選ぶこと、枠を埋めること自体を目的としないこと、状況に応じて使い分けたり組み合わせたりすることです。
フレームワークは、答えを出すものではありません。思考を整理し、「問い」をつくるための道具です。つまり、「分類しただけでは現実は変わらない」「きれいに整理しても実行されるとは限らない」「フレームワークは答えを出してくれない」ということです。
冒頭で、405事業が必ずしも機能していないケースがあると述べましたが、結局のところ、会社を変えるのはフレームワークではなく「人」である、という視点がなければ計画は機能しません。
次回は、計画策定のプロセスに焦点を当て、計画策定とフレームワークについて考えてみます。
木下 伸一