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最近、ある上場企業の不正会計が話題となっています。
「不正会計」と聞くと、大企業や上場企業の問題と思われがちですが、中小・零細企業にとっても決して無関係ではありません。今回は、中小企業の経営という視点から、不正会計について考えてみたいと思います。
中小企業では、会計上のコンプライアンスというと、「税務署に対して問題がないか」という意識が中心になりがちです。
売上の除外や翌期への繰り延べ、棚卸資産の計上不足など、利益を少なくして税負担を抑える方向の処理がその典型です。
一方で、業績を良く見せるため、売上や在庫を過大に計上したり、費用や損失を少なくしたりして、利益を実態より大きく見せるケースもあります。
税務だけを考えれば、「税金を多く払っているのだから問題ない」と考えてしまうかもしれません。しかし、決算書を見るのは税務署だけではありません。
金融機関から融資を受けている企業であれば、決算書は融資判断の重要な資料になります。実態より良く見せた決算書を金融機関へ提出して融資を受ければ、単なる会計上の問題にとどまらず、その態様によっては詐欺罪に問われる可能性もあります。
そして、不正会計にはもう一つ、経営上の大きな問題があります。
それは、「会社の本当の収益力、つまり会社の実力が分からなくなること」です。
経営改善では、まず現状の数字を分析し、課題を特定します。しかし、その出発点となる会計数値が実態と異なっていれば、分析結果も当然変わってしまいます。
例えば、わかりやすい例として赤字の飲食店を考えてみます。
古いレジや電卓などで会計をしていて、売上の一部が帳簿に計上されていなかったとします。意図的な売上除外ではなく、単純な計上漏れでも同じです。
売上が実際より少なければ、帳簿上の原価率は実態より高くなります。
そこで、「仕入価格が高い」「廃棄が多い」「メニュー価格が安い」と判断してしまえば、仕入れの見直しや値上げなどを改善策として考えることになります。
しかし、売上を正しく計上してみると、実は原価率にはそれほど問題がなく、本当の課題は「売上不足」だったかもしれません。
そうであれば、必要なのは原価改善ではなく、新規顧客の獲得、販売点数の増加(客単価)、リピート率、来店頻度の向上です。つまり、
会計数値が違う→ 現状認識を誤る→ 課題設定を誤る→ 改善策を誤る
ということが起こります。これでは、会社を良くするために努力していても、必要な方向への改善にはつながりません。
不正会計は、税務や金融機関への説明といったコンプライアンス上の問題だけではありません。正しい数字がなければ、自社の本当の姿を把握できず、本当に取り組むべき経営課題も見えてこない。
だからこそ中小・零細企業にとっても、正しい会計は「税金を計算するためのもの」ではなく、自社の実力を把握し、正しい経営判断をするための土台だと考えています。
最近の不正会計のニュースを機に、改めて自社の数字が経営の実態を正しく表しているか、考えてみるのもよいのではないでしょうか。
飯島渉